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映画「ミルカ」のネタバレありの感想。
インドに実在したミルカ・シンという伝説的陸上選手(400m 200m)の実話に基づいて作られた映画「ミルカ」を観ました。
お色気シーンが何回かあるので家族で見るにはお勧めしませんが、涙する場面が何度もある傑作映画でした。
フラッシュバックシーンは圧倒的な迫力があり、レース中の臨場感なども感じられる作品でした。インド映画お決まりのダンスシーンもありましたよ。
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目次(クリックでワープ)
あらすじ
世界記録保持者だったミルカ・シンは1960年のローマオリンピック400m決勝のレース中に後ろを振り返り4位に終わります。
なぜ振り返ったのか、その理由は彼の悲惨な生い立ちにありました。
実際に当時のレースの動画があります。第4コーナーを回ってきた時にミルカの顔が横を向いている気がしますがはっきりとはわかりません。このレースの優勝者が世界記録だったので負けても仕方たなかった気もします。
評価
2014年インド・アカデミー賞14部門独占
視聴制限
PG12…12歳未満の方は、保護者の助言・指導が必要です。
ラストシーンの解釈について
パキスタンとの試合に勝利したミルカ・シンが表彰される場面が映画上のラストですが、この映画が最も描きたかったのは、ラスト直前のゴールした後もしばらく走り続けたミルカが幼き頃の自分と笑いながら並走するシーンです。
なので、このシーンを以下「ラストシーン」として意味について考えます。
ラストシーンは間違いなく感動する場面なんですが、なぜ感動してしまうのだろう?という理由は頭ではすぐに理解できませんでした。
ミルカは後ろを振り返らなくなったのか?
他の人の感想を拝見すると「ミルカは後ろ(過去)を振り返らなくなった」というありきたりな薄っぺらい解釈が添えられています。
本当にそうでしょうか?
確かにパキスタンとの試合ではレース中振り返ることなく圧勝しました。この事実だけを取り上げて「後ろを振り返らなくなった」と考えてしまうと、この映画の深みを味わえていないように思います。
ゴール後のウィニングランでミルカは一瞬不安げな顔を見せ、後ろを振り返ろうとします。
眼球の動きで振り返ろうとしている気持ちが伝わってきました。
その時に目にしたのが並走する幼き頃の自分でした。
ミルカは後ろを振り返らなくなったのではなく、振り返ろうとした時に並走する自分と出会いました。ミルカにとって、幼き自分を見ることは強いメッセージ性がありました(もちろん観客にも)。
「並走する幼き自分」が意味すること
幼き自分が並走している意味についてはあらゆる解釈が可能ですが、僕なりの解釈を紹介します。
「恐怖からの逃走」という幼き頃のトラウマとの決別の暗示
今までのミルカは幼い時のトラウマを背負いながら走っていました。
肉体は練習によって鍛え上げていましたが、心は幼少期に逃げ走った記憶、親父の衝撃的な最期で満たされていました。
つまり、パキスタンとの試合以前は今の自分と幼き頃の自分が同一だったわけです。
「幼き自分が並走している」ということは、ここで初めてミルカは「今の自分」と「幼き頃の自分」とが分離したと考えられます。”何かから逃げる”ための走りとは一区切りがついたというシーンでした。
故郷で亡くなったと思っていた友人と出会い、同じ過酷な過去を背負って生きてきたのは自分だけじゃなかったと知れたことはミルカにとって大きな励みになったはずです。
「並走する幼き自分」はなぜ笑っていたのか?
並走しているのがミルカから分離した「幼き頃の自分」なら、トラウマを抱えているはずなので鬼気迫っていなければ辻褄が合いません。
しかし、映画では幼き自分は満面の笑みで並走しています。
ミルカは「歩んできた過去を辛いものとして整理して決別したのではなく、辛かった過去を受け入れた」という心情を表している気がしました。
逆説的ですが、受け入れることで距離を取ることができるようになり、辛かったこともポジティブなものとして感じられるようになった象徴的意味合いが強い。
「並走する幼き自分」はなぜ立ち止まらなかったのか?
ラストシーンのもう1つ重要な点は、幼き自分は立ち止まることなくずーっとミルカに並走していたという点です。
「過去との決別」であれば
- 鬼気迫る幼き自分が
- 立ち止まり
- ミルカは走る
ことで表現できます。
実際は
- 満面の笑みの幼き自分が
- ずーっと並走
- ミルカも笑って並走
だったことから「過去との決別」を意味していないことがわかります。
まとめ
- 「ミルカは後ろ(過去)を振り返らなくなった」訳ではない。
- 後ろを振り返ろうとした時に並走している幼き自分の存在を感じられるようになった。
- 笑いながら並走する幼き自分は、「恐怖からの逃走」というトラウマとの決別を暗示しながら、過去を辛いものとして切り離すのではなく、ポジティブに受け入れたことを象徴する存在。
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泣いて喜びます。
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