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アマヤドリという東京の劇団の「非常の階段」を見に行ってきます!チラシPOPのクオリティがすこぶる高く、あらすじも面白そうだったのでかなり期待しています。
僕にとって芝居を見にいくのは3回目で、初めての芝居はONEOR8、2回目は匿名劇壇。
2017年5月29日感想追記しました!
目次(クリックでワープ)
「非常の階段」とは
- 2014年初演。「悪と自由」シリーズ3部作のvol.2「非常の階段」
- 2017年5月〜6月に宮城、兵庫、愛知、東京の4都市で上演される。
- 関西初上演。次代を担う表現者の発掘・育成を目的とした“次世代応援企画「break a leg」29年度第1弾に選出。
あらすじ
太宰治の「斜陽」をモチーフにした自由と平等をテーマにした話。
「世の中には二種類の人間がいるんです。感動をくれるバカと、タダのバカと。」
芝居のタイトルとかあらすじの文章がとてもセンスがいい。
伊丹公演の日にちと時間
僕は伊丹(兵庫県)最終公演の28日15時に夜勤明けで家に帰らず直で行く予定です。
汗臭いのがいやなのでどこかでシャワーだけでも浴びたい。
寝落ちしたらずみませぬぅ〜・・・。
【非常の階段*伊丹公演】
アマヤドリツアー 2017『非常の階段』@ AI・HALL
2017年5月26日(金)〜28日(日) 「世の中には二種類の人間がいるんです。感動をくれるバカと、タダのバカと。」https://t.co/qbC9UHhFL7 pic.twitter.com/Zr5Vq29wD2— アマヤドリ (@amayadorix) May 15, 2017
AI・HALLっていうのが関西では結構演劇の中心地?みたいな所らしいので雰囲気も楽しみです。
劇団アマヤドリとは
現代言語から散文詩までを扱う「変幻自在の劇言語」と、クラッピング・群舞などを取り入れた「自由自在の身体性」を活かし、スピード感と熱量溢れる舞台を創り上げます。
宇宙にたった一人で取り残されたような孤独な魂を、孤独のまま「つながり」に変えることが演劇になら出来ると信じてきたからです。今日もそのことを信じて、演劇の続きをしようと思います。
「非常の階段」の感想
観劇後感想を追記します。
女優の親と
会場となるAI・HALLに1番乗りで到着。
館内には開場時刻まで入ることができず、入り口付近で待つことに。
ほぼ同時に来た底抜けに明るいおじさんと談笑する。
娘さんが出演しているらしく、それを嫁と友人を誘って見に来たそう。
芝居だけでなく、どの子が「明るいおじさん」の娘かを探る楽しみができたw
伊丹市立演劇ホール(AI・HALL)
整理番号は5番と6番(おじさんグループが4枚購入)。
ホールは約100人くらいのキャパシティで開演時刻には満員となっていた。
椅子はパイプ椅子、列ごとに少し段差になっていて、前の客が邪魔で見えないということはない。
ステージは開放感があり、客席からの距離感も近く迫力がビンビン伝わる。
前の席だとステージの左右が同時に見渡せないので、中央か後方の席の方が全体を見るにはいいかもしれない。
開幕と同時に名作
散文詩的なセリフを話す1人の女が中央に、2人の男が客席に正対する形で左と右に。3人でやり取りをしながらも、基本は客席にまっすぐ向かって話してくる。
一緒に行った友人が観劇後「開幕してすぐ、真ん中の女の人と目が合ってんけど、ずっと見てくるねん、マジでずっとやねん。なんなんめっちゃ見てくるやんと思ったわ。」と話していた。
僕は「目が合う」感覚はなかったけど、この始まり方は心を鷲掴みされてしまうなと思った。
舞台の上で芝居が始まったのではなく、客席に、自分に向かってメッセージを直接投げかけてくるそんな感覚。
「非常の階段」のキーポイントとなる、主人公の「記憶」にまつわる話をしていた。自分の記憶なのか、他人の記憶なのか、自分の意志なのか、そうじゃないのか。そんな話だった気がする。この辺は2回目、3回目と見る人が楽しめる部分だろう。
場面転換は死角ではなく照明で
今まで見に行った他の劇団の芝居は場面転換がONとOFFの切り替えだった。
芝居時はONで場面転換時はOFF
OFFの時間をできるだけ短くするように、手際がよかったり、舞台上の死角を活かしていた。
「非常の階段」では舞台上に客の視線を遮る物は何もない。
演者は死角に逃げることができないので、照明の明暗で場面転換をうまくしていた。
ONもOFFも存在しない感じ。
ずっとONだし、ずっとOFF.。
時間と空間の乱れの表現がお洒落
後半になると時系列が入り乱れ、空間すら入り乱れてくる。
その「乱れ」を表現するために、1つ前の場面の人たちがはけずに同じ舞台上にいる。セリフすらないこともあるが、それがうまく表現として機能していた。
見ていてかっこいい。
この魅せ方はテレビではできないよなぁと思った。
劇団アマヤドリが「秩序立てられたカオス」と自称しているのも納得。
ナイトの経験を客は追体験する
照明1つで時間と空間の乱れを表現していたけど、
話としては人間の記憶(精神)の乱れを描いていた。
詐欺電話を受けたお母さんの「あなたみたいな子が息子じゃなくて本当によかった」などの発言は、ナイトの心の中の妄想なのか、現実なのかは見る側の解釈に委ねられている。
時系列もナイトが自殺する前の出来事なのか、生死を彷徨っている時のナイトの胸の内なのかが曖昧でいかようにも解釈できる。
ナイトの「自分の意志のなさ」を原因とする「自分の記憶なのか他人の記憶だったのかがわからなくなる」という特長を、客は芝居を見ることを通してあたかも追体験しているようでした。
「何が事実で、何が妄想なのか」混沌とした世界に、客は自分なりの解釈を見つけるためにさまよう必要があります。
- ナイトの自殺理由は何だと考えた(理解した)か
- ナイトは死んでしまったのか
- 大谷はナイトに会いに来たのか
- 大葉サカエのリストカットの理由
- ダーさんのノートは本当にナイトが書いたものなのか
- なぜダーさんがそのノートを持っているのか
- 仲間そのものがナイトの妄想だった可能性は?
- ならば大谷の存在の有無をどう考える?
カウンセリングでは3つの「間」をしっかり設定しなきゃ治療効果なんて発生しないという話がある。
会う時「間」を設定し、クライエントが守られていると感じられる一定の空「間」を決め、セラピストという日常生活では存在しない人「間」を感じてもらう。
時間、空間、人間という3つの「間」の乱れが「非常の階段」ではうまく表現されていました。
エンディングが2度ある
1つはナイトが自殺を試みるまでの話(あるいは意志のないナイトが床を叩いて悔しがったシーン)もう1つはナイト自殺後の大葉千鶴と大谷とのやり取り。
冒頭の散文詩的なセリフや、中盤のキーとなる印象的なセリフがラストのフリとして機能していて伏線の回収が鮮やかでした。
ナイトの死にまつわる芝居は、鳴っていた曲が止まって数十秒の静寂が場を支配、見ている方も異様な雰囲気を味わえました。
故障なの?芝居なの?という焦りもあったりしてw(まさか開場時間が遅れた「音響の機材トラブル」もそれへの布石なんて事ないよね汗)
「非常の階段」の意味
芝居のタイトル「非常の階段」の意味については全くわかりませんでした。それをテーマにした話やセリフは出てこなかったと思います。
ナイトが踊り場の手すりで首を・・・という話だったので、それが「非常階段」だったのか、ナイトの心の非常階段として大葉家や仲間がいたという事なのかもしれません。
「手を組んだら離すなよ」という怪談話もあったので非情の怪談説も?
手で目を覆う仕草の意味
ポスターの女性ように自分の目を自分の手で覆う仕草はラストシーンで見ましたけど、それがどういう意味でやっていたのかはわかりません。
目を手で覆うのは、誰かが「だーれだ」と言ってやるのが常ですけど、
自分で覆うという事は、自分自身に対して「私は誰?」という問いかけをしていると読み解ける気もします。
広田淳一さんのメッセージが深い
アマヤドリ、作、演出、主宰の広田淳一さん。
開演前に少し挨拶してましたけど、多忙でげっそりしてて倒れてもおかしくない感じでしたw
挨拶文の最後の方に
明るさの中に哀しみを、楽観の中に絶望を、真剣さの中に滑稽を、そして、断絶の中にあるかすかな手応えを、感じとっていただけたなら幸いです。
という文章が。
「哀しみの中に明るさを、絶望の中に楽観を」と書かないあたりが、すんごい感性の持ち主だなぁと思いました。
今回の芝居を見てアマヤドリの大ファンになりました。
関西で上演される機会があったら是が非でも見に行きたいです。
アマヤドリの過去作は観劇三昧という定額の見放題サービスでいくつか見れます。
参考 いつでもどこでも観放題!演劇動画配信サービス「観劇三昧」
2014年に演じた「非常の怪談」が見れるので、2017年のバージョンと比較する事も面白そうですね。
「明るいおじさん」の娘さんは僕の予想では大泉まな役の大島萌さんだと思いましたw
骨格的に間違いない!
【非常の階段*四都市ツアー】
アマヤドリ『非常の階段』@ AI・HALL
無事終演いたしました!ご来場誠にありがとうございました! 引き続き豊橋・東京、スケールの異なる劇場で『非常の階段』はまだまだ続きます!乞うご期待!https://t.co/qbC9UHhFL7 pic.twitter.com/1CJLSymskH— アマヤドリ (@amayadorix) May 28, 2017
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泣いて喜びます。
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