芝居「しまって、あけないで(ヨドミ)」を見た感想

TACCS1179
ヨドミの芝居を見にTACCS1179へ

この記事の読了時間は約11分です。

芝居「しまって、あけないで(ヨドミ)」を見てきました!

タイトル、あらすじ、POPのセンスから大きな期待をして見に行きましたが、

予想以上、想像以上の面白さで、大満足でした。

2時間の公演もあっという間で、腕時計を1度も見ることなく終演。

@49hackJpが芝居を見て感じたこと、深読みしたことを書きます。

「しまって、あけないで」を見に行って、その面白さを共有したいって人や、

「しまって、あけないで」を見に行ってない人にも、その面白さが伝わればと思います。

以下、ネタバレ要素も含みます。

記事執筆時点で全日程が終了していますが、再演などの可能性もあるので

これから、「しまって、あけないで」を見にいくぞ〜って方は注意して読み進めてください。

@49hackJpの投稿した簡単な感想。

テンポ感よく、人間の苦しみに光を当てながら、コメディー要素もあり、タイトルの深みも感じた。涙している人も多数。時間を作って見に行くべき芝居!

引用元:ーヨドミー「しまって、あけないで」の観てきた!クチコミとコメント | 演劇・ミュージカル等のクチコミ&チケット予約★CoRich舞台芸術!

スポンサーリンク

「しまって、あけないで」の概要

-ヨドミ- 第六回公演

パンフレットの挨拶文

入場者に配られた挨拶文

あらすじ

いけないと思っていても
やってしまうのは人の性で
あの時、きっと開けない方がいい扉を
そっと開けてしまったんだと思う

だから、きっと、そういうことなんだと思う
言わなきゃ、言わなきゃ
「しまって、あけないで」

男は記憶を失った。まるっとあの頃に戻ってしまった
妻を、仲間を、仕事を、家族を愛していたあの頃に
今目の前にいる人は、本当にあの頃大切にしていたものなのだろか

-ヨドミ-がおくる
記憶を巡る現代劇 記憶と、愛と、人と、答え

引用元:第六回公演『しまって、あけないで』 | -ヨドミ-

正直、記憶喪失の物語はあまり好きではないんですが、

「しまって、あけないで」は楽しむことができました。

作品への想い

-ヨドミ-第六回公演「しまって、あけないで」の本番直前、劇団員収録ラジオ

公演前に聞くよりも、公演後に聞いた方が面白く聴ける。

スタッフ

脚本/演出:藤丸亮(-ヨドミ-)
舞台監督/舞台美術:林大介(零´sRecord)
照明:若原靖
音響:井上匠(零´sRecord)
広告美術:ワタナベユウキ
写真撮影:アラタ
映像撮影:赤羽芳昭(PROJECT-D)
当日運営:黒田七瀬
制作補佐:児玉進吾(-ヨドミ-)
制作:-ヨドミ-

キャスト

  1. 加々見千懐
  2. 中山ヤスカ
  3. 創木希美
  4. ハマツタカシ
  5. 山本恵太郎、(以上、-ヨドミ-)
  6. 石塚みづき
  7. 桑山こたろう
  8. 紺乃鳳文(ゲラリズムウェーブ)
  9. 島田朋尚(元氣プロジェクト)
  10. 橘U子(ケンユウオフィス)
  11. 月岡鈴
  12. 西出結
  13. 平塚正信(殿様ランチ)
  14. 程嶋しづマ(聖地ポーカーズ)
  15. 松井珠紗
  16. 遊佐邦博(大統領師匠)
  17. 依乃王里

主演の山本恵太郎さんが抜群の存在感。魅惑的な演技が素晴らしかった。

ヨドミとは

赤色の装飾は@49hackJpの編集。

2019年6月より活動をスタート。
藤丸亮と山本恵太郎が意気投合しスタートした劇団。
各々役者を集め、今の形となる。

「ジェットコースター演劇」「ネガティブコメディ」と呼ばれる藤丸の作風を、個性豊かな俳優陣が形にすることにより、人の心の奥底に眠っている感情を引き出す。 速く強く美しくをテーマに、様々な心の闇に焦点を当てる。

引用元:about | -ヨドミ-

劇団ヨドミの特徴を表すわかりやすい文章があったので紹介します。

赤色の装飾は@49hackJpの編集。

藤丸亮とは

集団asif~主宰 作演出俳優
人間が目を背ける暗い部分に目を当て、それを引き出す演出で評価を得る。
演劇祭での優勝や優秀脚本賞を引っ提げ、様々か団体への脚本の書き下ろし、演出を行う。
集団NOPLAN,七味の一味等 また後進の指導にも熱を入れ、小学校から高校にまで演技指導に招致され指導を行っている。

≪集団as if~の作風・特徴について≫
ネガティブコメディを提唱し、前半はインプロという即興芝居を混ぜつつハイテンポに芝居を進め、後半は人間の心の闇を抉り出す。ジェットコースター演劇としばしば評価される

劇団キャッチコピー
『人生は遠くから見たら喜劇だが、近くからみたら悲劇である』

引用元:集団asifのオーディションの案内 | 夢ジョブのレッスン、ワークショップ、オーディションサイト

※集団asifとはヨドミの前身となった劇団です。

「しまって、あけないで」の感想

主演の山本恵太郎さんが会場の案内係を開演の数秒前までやっていたことに驚きました。

また、グッズの販促をしていた女優さんも、結構なメイン所の役なのに直前までグッズ販売をしていておったまげ。

稽古を重ねているからこその余裕なんですかね。

開演してすぐは、演者が階段が壊れて踏み外しそうになったり、セリフの甘噛みがやや多く、波に乗れない感じがありましたが、中盤以降はミスもなく、楽しい芝居に没頭することができました。

芝居の特徴は何か

「しまって、あけないで」も、上述したように

  • 人間の暗闇に焦点を当て、えぐる。
  • ハイテンポ
  • 劇が佳境になるにつれ悲劇的要素が強くなる

という要素を含んでいたと思います。

「しまって、あけないで」の意味を考察する

@49hackJpの記憶では

タイトルの「しまって、あけないで」が発言されたのは3回。

主要キャラクターがそれぞれ1回ずつ。

発言シーンとしては以下。

①冒頭:主人公が失われていく自分の記憶に対して

②後半:主人公の妻が家に置いてあった薬に対して

③ラスト:娘が私達の家族の秘密を守ろうとして

ベクトルの比較

①は記憶を留めたいからやめてくれというポジティブな方向での発言なのに対し、

②と③は記憶を掘り起こしてほしくない、見てほしくないというようなネガティブな方向での発言であり、ベクトル(矢印)が違います。

(③に関してはネガティブではなくポジティブだろうという意見もあると思いますが・・・)

そのベクトルの違いが、記憶を取り戻そうとする主人公と

それを迷惑がる周りとしての対比的なストーリーが展開していくことになっていきます。

ここまでだけでも、

タイトルに込められた重みを感じることができ、すごいなぁと思っていました。

「しまって、あけないで」という言葉に隠されたもう1つの意味

観劇後に、タイトル「しまって、あけないで」には、もう1つの隠された意味があるのではないかと思い至ります。

物語後半に主人公がなぜ製薬に没頭していたのかという理由が明らかになります。

妻の流産をきっかけに、流産を防ぐための薬、お腹の中になんとか子供を留められないか、そのための薬を開発するようになったと。

つまり、「しまって、あけないで」とは、お腹をあけて、子供を取り上げないでという解釈も成り立ちます。

であるならば、

④実は流産にショックを受けていた主人公(妻)の心の叫びであり、

お腹の中にとどまり続けたいという赤ちゃんの想いでもあるのではないか。

この④に関しては①②③と違い、声を伴う発言がありません。

観劇した客の心に語りかけてくる

声にならない「しまって、あけないで」なのではないでしょうか。

流れの転換点がうまい

それぞれの想いがやっと交錯し接点が生まれそうになった、その刹那、

逆に、大きなすれ違いが発生するという転換点の見せ方がとてもうまいなぁと思いました。

演出としてもテンポアップしたり、大人数が一気に押し寄せたりと、

見せ方がかっこいいし、

確かにそれだけ大袈裟に演出してもいい、大事な場面だよねと納得できるというか。

芝居の中だけの話でなく、日常生活でも、そうした瞬間というものを見逃さずに捕まえていかなきゃなと思えました。

セットは超簡素

セットは今までみた芝居の中でも1、2を争う簡素さ。
色や背景がなかった気がします。

セットが階段になっていて高さを有効活用した演出があったりと工夫を感じることができました。

記憶喪失の話なのでセットの無機質で無骨な感じがマッチしてました。

このシーンなんですかの面白さ

劇中の主役が一瞬、劇の中を飛び出して、劇を批評することがありました。

脇役「なんなんですかね・・・」

主役「・・・このシーンですか?」

(客 大爆笑)

本来、リアリティにしてもファンタジーにしても、その中の世界1つで物語を展開するのが王道なので、劇の中の人物が劇を批評することはあってはならないと思いがちですが、

箸休め的な位置付けとして、ここで演者も観客もほっと一息つけた面白いシーンでした。

7月7日を七夕ではなく、都知事選で落とすなど、

この場面はコメディ要素がとにかく秀逸でした。

印象的だったセリフ

主人公の妻が話した言葉が印象に残りました。

殺したい。理由なんて忘れた。でも殺したいのよ。

理由があって感情が増幅されていったはずなのに、

その理由を忘れても増大した感情は止められない。

憎しみが深いとこうなるんだなと。

あなたが私を好きでも、私はあなたが嫌いなの

このセリフから逆算して芝居を作れるほどの言葉のポテンシャルを感じました。

とにかく一生に一度は言ってみたいw

バッドエンドとハッピーエンドの中庸

バッドエンドでありながらハッピー・エンド。

ハッピーエンドでありながらバッドエンド。

そんなラストでした。

痛みを伴う家族再生の物語。

二海(ふみ)ではなく海(うみ)として生きる覚悟。

「しまって、あけないで」のネガティブな感想

ここどうだったのかな〜という気になって点について

ラストのシーンの時系列が分かりにくい

ラストのシーンの時系列が少しわかりにくかった。

海に行くことは一度頓挫していたのでは?

家にあった薬を役所の人が開けようとしたシーンで妻の留めていた記憶が次々と明らかになり、そこから、どのような時系列でそうなったのか。

@49hackJpが芝居のスピード感についていけてなかっただけかもしれませんが。

娘の葛藤の苦しさが想像しづらかった。

娘の葛藤の苦しさが嫁と主人公のそれと比べると想像しづらかった。

  • 流産した子の再来として産まれ育てられたこと
  • 男の子じゃなかったこと
  • 役所の人との関係
  • 夫婦不仲

色々あるとは思うがあれだけの熱量で怒るならば、

その怒りの根源となるシーンがいくつかあってもよかったのではないか。

あれだけのテンポ感で2時間なので、時間的には盛り込むのが難しかったかもしれないが。

最後に

ヨドミという素晴らしい劇団を見つけました。

テーマも演出も@49hackJp好み。

こういうのを俺は芝居に求めてるんだよなっていう要素が全部入ってる劇団です。

劇団子供鉅人、アマヤドリ以来の好きな劇団ができました。

次期作絶対見ます。

山本恵太郎さんしばらく休演が悲しすぎる。

最後握手してもらおうと思ってできなかったので尚更。

参考 山本恵太郎(@keitaro258)さん / X


この記事をブログ等で紹介する際は下のHTMLコードをコピペしてお使い下さい。
泣いて喜びます。

<a href="http://49hack.jp/yodomi-simatte-akenaide-review/">芝居「しまって、あけないで(ヨドミ)」を見た感想</a>

google関連記事広告
スポンサーリンク

コメントをどうぞ

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA


このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください